Dear to me

5章 〜 想いを形に、愛をこの手に

今日の天気は快晴、海に面している街のためか風はよく吹いているが天気が崩れることは
あまりない街だ。

(あ、でも今年の冬は珍しく雪が降ったっけ)
真澄は自分で自分にツッコミを入れ苦笑した。

真澄が今いる場所は灯台の下の公園、全てが始まった場所に真澄はいた。

病院には街へ行くと外出届けを出したが、ふと思い立ってこの場所まで足を運んでみたのだ。

足は快調、どうやらリハビリのお蔭で完治したらしい、後は声が出るようになれば
全回復なのだが。

真澄自身何故ここまで来たのかはよくわからなかった。
ただ、ここに来れば会える気がしたから。
そう、愛しい彼に。

気配を感じて後ろを振り向くと彼が立っていた。

ただ隣には彼の幼なじみの娘も一緒だった。

彼女とは決着をつけないといけない仲なのだが今の真澄には戦う気はなかった。

彼に会える予感を信じて来た場所に彼が本当に来てくれた、その思いの方が強くて、
ただ嬉しくて、真澄の心を穏やかなものにしてくれた。

彼は以前自分の笑ってる顔が素敵だと言ってくれた。

(だから、ここであなたに会えた喜びを全身で伝えよう、あなたが好きだと言ってくれた
笑顔に精一杯込めて)
真澄は彼に向かって微笑んだ。

それは今日の空のように澄み切った眩しい笑顔だ。

ーあれ、この笑顔はどこかで…ーそれが真澄を見た健の感想だった。

朝、沙希に無理矢理叩き起こされ連れてこられた灯台下の公園で眩しくて穏やかな微笑みが
自分を待っていた。

いきなり微笑まれたことに驚いたが不思議なことをこの笑顔を待っていたような感覚にも捕
われた。

(ああ、そうか。この笑顔はさっきまで見てた夢の女の子にそっくりなんだ。

でも、もっと身近でいつも見ていた気がする…)健が頭の中で色々と考えていると、
隣の沙希がそっと健の背中を押して前に出した。

健は戸惑ったが沙希が自分のために気を使ってくれたのだとわかり、素直にその好意を
受けることにした。

それが彼女の望みだとわかったから。

ーこれでいいんだー沙希は心の中で思った。

今朝、健を起こしに彼の部屋に上がった時、彼の「…真…澄…」という寝言を聞いて
しまったから。

その時沙希はわかってしまった、健が求めている人が自分ではないことを。

だから健を叩き起こしてここまで連れてきたのだ。

思いつくままにこの公園に来た、真澄がいるだろう予感がしたからだ。
こういう時沙希の勘はよく当たる、いわゆる女の勘というやつである。

そして真澄の笑顔を見て沙希は負けたと思った。

健のことは子供の頃から大好きだが、自分はこんなに眩しい笑顔を彼に向けることが
出来ないのをわかっていたから。

今日ここに来なくてずっと健と一緒に過ごすことも出来たのだが、彼の本当の想いを
知ってしまったからそれは出来なかった。

すれちがいの想いではお互い幸福にはなれないから。

(だから健のことは悔しいが彼女に任せよう、あの二人ならきっと素敵な関係になるから…)沙希は目元が熱くなる
そう感じた。
(やばっ、泣きそう)

涙はすぐそこまで込み上げてきたが沙希はぐっと我慢した。

(ここで泣けば健が心配して彼女と真っ直ぐに向き合えないから、悲しいけどここは
耐えよう。

後で家に帰って子供のように声を上げて涙が枯れるくらい長い間泣こう)

思い切り泣けば明日は笑顔でいられると思うから…。

(ありがとう、沙希さん…)

沙希が健の背中を押してくれた時に真澄は彼女の心中を察し、心の中でお礼を言った。

真澄は健と向き合った。

こうして彼つ正面から向きあったのは何か月ぶりだろう、最後に記憶に残ってるのはリボン
を買ってくれた時だ。

ああ、伝えたいことはたくさんあるのにうまく言葉が出てこない。

(って、あたし今声が出ないんじゃん!)

心の中でツッコミを入れる、自分は今そうとう舞い上がってる上に声も出ないときた、
これではまともに会話など出来そうにない。

「あの…」健が真澄に声をかけてきた、しかし舞い上がってる真澄はどうリアクションして
いいかわからず壁のように固まって動けなかった。

その時、
「大変だ!子供が溺れている!」

大声が公園内に響きわたった。

その瞬間、真澄は海に向かって駆け出していた。

(子供を助けないと…!)
その思いが彼女をつき動かしていた。

しかし、走ってる途中で彼女は考えた。
(あれ?でもさっきまで海辺で遊んでた子供なんていたっけ?
ここから海に落ちるとしても私が今向かってるダイビング設備のある場所だけだし…)

そこまで考え真澄は気がついた。

(ハメられたー!)しかし気付いたところでまさに飛び込む体勢の体は止まらない、真澄は
自分の性格を呪いつつ覚悟を決めた。

ーあれ?この光景は…ー飛び出した真澄を追い掛ける健はこの前の自分の姿を思い出して
いた。

(この後海に飛び込んだはいいけど俺も波にさらわれて助けられて…)
(助けられた?沙希に?嫌、あいつは確か浜辺に打ち上げられた俺を助けてくれただけだ。
その前にボートに上げてくれたのは…)

そこまで考え健の中で何かが弾けた、全てを思い出したのだ。

(畜生!何だって俺はこんな肝心なことを今まで忘れてたんだ!)

健は走る速度を上げた、目の前には今まさに海に飛びこもうとすの彼女の姿が目に飛び
込んで来た。

(待ってろ、今度は俺が助けてやるからな!)

健は先に飛び降りた彼女の後を追って勢いよく飛び降り、彼女の手を掴み自分に引き寄せた。

ざっぱーん!
二人は勢いよく海に飛び込んでいった。
(あれ?生きてる?)真澄は不思議に思い、下に目をやった。

すると、どうしたことかきちんと安全対策が成されていたのだ。

まるで事前に飛び込むことがわかっていたかのように。

目線を動かした先に見知った二人の姿があった、美亜と杏奈である。

二人は真澄に向かってVサインを送って来た。

どうやら今回の主犯はこの二人らしい。

なるほど、どおりで安全対策はされてるし自分の性格をわかっている二人はどうすれば
真澄が飛びこむかを知ってるからあんな嘘を大声で言えたわけか。

そこまでわかって真澄は腹が立ってきた。
(なんでこんなことしたのよ!)と、大声で怒鳴ってやりたかったが声が出ないため
心の中で叫んで二人を睨みつけてやった。

「大丈夫か?」隣で声がしたのでびっくりして振り返ると健がいた。

よく考えれば一緒に抱き合って海に落ちたのだから隣にいて当然なのである。

怒りで思考が止まっていたようだ。

健の答えに真澄はうなづくと、「よかった…」

そう言って真澄を抱き寄せた。

真澄の混乱をよそに健は続けた。

「あの時は助けてくれてありがとな。それと忘れていて悪かった」

その言葉を聞いて真澄は美亜と杏奈の今回の騒動の意図に気付いた。

あれは一種の荒療治だったのだ。

確かにあの時二人のサポートが無かったら多分気持ちば かりが焦ってうまくいかなかっただろう、
二人には大きな借りを作ってしまった。

(しか し…よりによって何でこういう方法しかとれなかったの?結果的にうまくいったからいい けど
もう死んでしまったら元も子もないじゃない!)

真澄は心の中で二人に文句を言って やったが途中でどうでもよくなって止めた。
(今は健君のことだけをかんがえよう…)

真 澄は健の背中に手を回した、健は真澄を強く抱きしめてくれた。

空に輝く太陽が真澄と健 が立ってる周りの水 に写り、波にゆられていた。それはとても美しい光景だった。


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