海の見える街

まばゆい光の差し込む部屋の中で一人のんびり外を眺めていた・・・。
窓から吹き込む風が気持ちいい。その窓から見える風景は海の見える街。
街並みの向こうには海が見えた。
すごくのどかな風景・・・。街と言っても大きいものなんてなにもない。
ただそこに住む人が普段の日常通りに過ごしていた。
こういったのどかな風景を見守ることが好きだった・・。

かけるー、何してるの??早く行こうよ!!
下から声がした。見てみると幼馴染のしおりが呼びにきた。
何か約束でもした?かけるは思い、表へでた。
しおりは少し頬をふくらませて言った。
今日は浜辺で一緒に貝殻の髪飾り作ってくれるって言ってたじゃん!!
そういえばそんな約束してたっけ。かけるは思い、とりあえず、うなずいた。
考えてみると今日はクリスマスイブ・・。
しおりのために髪飾りを作ってやる約束をしていたっけ・・。
思いだしながらしおりに手をひかれるまま、海へ向かった。
街を抜け小さな橋を渡ってすぐの所に前から来てる浜辺があった。
ここ最近はこなかったけど本当に何一つ変わってない場所・・・。
大きな岩があって、昔からかけるとしおりはその岩の周りで遊んでいた・・・。
その岩に二人で座っていろんな話をしたりもした。かけっこもした。
小さい頃から、二人の将来を約束してたっけ・・。
大岩に名前が彫ってある、二人の名前がそれを物語っていた。
今となっては遠い昔のような気がする。
貝殻拾いにも疲れ、今日も岩に座ってよせて返す海を眺めていた。

昔は毎日のようにここにきてたよねー。ここでいろんな話したり遊んだり・・。
しおりは静かに言った。その横顔が少し淋しそうだ・・。
変わらないよね。ずっと前から同じ海見てきてるけどさ。
海ってよせては返しながら少しずつ変化してるみたいだけど、長い、長ーい年月をかけてるから、それってなかなかわからないんだろうなぁ。その年月を考えると、私たちなんて海にとってホンの一瞬なのかもね。ちょっと淋しいな・・・。

しおりはうつむき続けた。
そうだな。海や自然の年月にくらべたら、ホンのひと時にしかすぎないかもしれない。
今見てる風景が、自分の子供も、そのまた子供ももしかしたら何世代先の人にも同じ風景に見えるかもな・・。
でも変わる事より、変わらないとこってすごく難しいことだし大切なことなんじゃないかな?

今度はしおりはかけるの言葉ににっこりした。
だね♪私たちは変わったのかな?
しおりがこっちを見る。かけるは上を向いて
さぁ、どうかな。
海の波音でかき消された気がしたけどしおりはにっこり微笑んで何かを言ってたようだ。
今日はクリスマスイブ・・。冬の空は真夏の空みたいに、いやそれ以上に青い気がした・・・。

陽射しが海に反射して一瞬目がくらんむ立ち眩みをしたみたいだった。
そして目の前にとても大きな波が押し寄せていた。
かけるは何もすることができなく、ただ波に飲まれるのを待つだけだった・・・





気がつくと砂浜で気を失っていた。
何がなんだかわからなくなりふと辺りを見回す。
・・いつも見ている景色。さっきまでいた海だった。
岩も何もなかったかのようにたたずんでいる。
かけるには何が起きたのかわからなかく、顔をしかめた。
とりあえず家にもどることにした。
橋を渡りいつもの街並みを越えていく・・。
そこにはいつもの日常があたりまえのようにあったが少しだけ雰囲気が違う。
建物が少し新しくなってるものと古くなってるもの。
空き地だったところには家ができており、遠くには高い建物が太陽の光を遮っていた。
いつの間にこんな建物ができてた?自問自答をする間もなくすれ違っている人が見慣れない人ばかりだ。
でも初めて会ったようなものでもなく、おぼろげに面影を感じがした。
家に戻ってみると、自分の少年時代によく似た少年が玄関先でサッカーボールを蹴っていた。
9歳くらいであろうか・・。リフティングも手馴れた感じだった。
しばらく少し遠いとこから覗き込んでみると、家の中から声がして、少年はボールを抱えて家に入っていった。
なにがなんだかわからなかった。自分の家にかすかに自分に似た少年が住んでいる。
家の周りの庭の窓から、そうっと中の様子をうかがってみた。
家の中は電灯がこもっていて、テーブルいっぱいの料理と笑い声が聞こえてきた・・。
明日のサッカーの試合がんばるのよ♪
女性が少年に話しかけている。二人の向かいあっている横顔が見えた。親子のようだった。
鼻にかかった少し高い声、大きな瞳。栗色で襟足が丸まったロングヘアー。
見たことのある、いや間違いない!しおりだった。
大丈夫、絶対勝つよ。あんなに練習したんだしさ!
大きな瞳をきらきらさせながら少年は言った。
あれ、なんなんだこの子は。
しおりが自分の家で子供と食事をしている。
これは夢?もうしばらく、中の様子を伺ってみた。
ねー、お父さんは、すごくサッカーうまかったんでしょ?
子どもの言葉にしおりはフォークを止めた。
そうよ♪この辺でも有名だったんだから・・・
笑顔がなぜか痛々しい。

(…)

ごちそうさま。
食事を終えた少年は立ち上がって食卓から腰をあげた。
あれ?どこ行くの?
父さんのとこに行ってくるね。
そう言って少年は表へ出た。しおりは静かに食器を片付けはじめた。指先で目を拭っていた。
少年は近くの丘へ歩いた。
小高い所で、そこからも海が見えた。
少年は石段の前に手をあわせる・・・。
お父さん、今度の日曜日にサッカーの試合があるんだ。僕のチームが勝てるように応援してね。僕もお父さんのように強くなりたい・・
そう言って少年はその場を後にした。
かけるは少年の手を合わせていた所に駆け寄る。
かける・享年二十歳・ここに眠る…
俺の名前・・唖然とした・・俺がこの世にいない。これは夢なのか。それとも未来??
・・・・かけるはその場に膝まずいた。
あの時の波で俺は死んでしまったのか・・。そしてなぜか未来にいる。
これじゃまるで亡霊そのものではないか。
どう感情を表していいのかわからなかった・・すると
あれ?お兄ちゃん誰?
供え物を持った少年が不思議そうにかけるを見た。
つぶらな瞳の中に自分が映っている。突然のことになんて言っていいかわからず口をごもらせた。
あっ、もしかしてお父さんの友達!?
唐突な言葉に
うん、そんなとこかな。
そう言って立ち上がった。
君はいくつ?名前なんていうのかな??
名前はさくやで、11歳です!
かけるはさくやに駆け寄って頭を撫でながら言った。
さくや君か。いい名前だね★
その言葉にさくやは嬉しそうに
ママが付けてくれたんだ!いいでしょー♪
かけるは下を向いて苦笑した・・。そしてちょっと考えた。
そっか、そういえばもうすぐでサッカーの試合があるんだろ?お兄ちゃんが練習みてあげよっか?

(なんでそんなこと言ってるのか自分でもわからなかった。少なくとも、この子の力になりたい‥と本能的に感じた。)

ホントに!?嬉しいなぁ〜。僕だけいっつも一人で練習してたから〜」瞳を輝かせながら、言った。
それがさくやとの出会いだった。


次の日、かけるはあの大岩のところに腰掛けていた。そこはかけるとしおりのお気に入りの場所。
岩には昔彫った自分達の名前が書いてある。
いつも見ていた海の景色。
それも自分のいた頃とちっとも変わってなかった‥。
その光景にかけるは少し笑った。

「俺はなんのためにここにいるんだろ?」大きな海に尋ねたが、返ってくるのは波の音だけ…。大きく、遠くまでその青さは広がっていた。
「おーい、お兄ちゃん!」声がした方を見ると、少年が、サッカーボールを抱えながら
こちらに向かってきた。
さくやだ。大きな瞳でかけるを見ている。
「おっ、来たな。じゃーさっそくやってみようか☆」
さくやからボールをうけとり、地面にボールを転がす。
ボールは砂浜の上で「シャリっ」と音を立てた。
久々の感覚。ボールをすくい上げ、4、5回リフティングして、頭の上でボールが跳ねてる。
まるでボールが、かけるに吸い付いているようだ。
  それを見て、さくやは
「わぁー、お兄ちゃんうまいね!」と目を輝かせた。
かけるはちょっと得意げに、ボールを高く蹴った。
空を見ると太陽とボールが、重なって、一瞬暗く見えた。
ボールが落ちてきて、ふたたび太陽の光が瞳に映り、眩しくて目をそむけた。
そむけた方向には見覚えのある男の顔がこちらを見ていた。




本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース