Dear to me

3章 〜想い届くことなく

「たった一週間でここまでできるようになるなんて・・・」

杏奈は真澄を見て驚きの 声をあげる。

真澄がリハビリを始めてから一週間、すでに真澄は歩くことは普通にで きるほどに回復していた。

医者曰く、回復力が尋常じゃないとのこと。
「これなら退 院ももうすぐね」美亜が嬉しそうに言った。

真澄は二人が帰った後、しばらくリハビリをしていたら、担当医が来て、
「その様子なら外出しても大丈夫そうだね」と外出許可をもらうことができた。

その夜、真澄は明日すべきことについて考えていた。
(うまくいく保障は無いけど・・・何もしないよりはマシなはず!)

翌日、真澄は 水色のリボンを手に街へくりだした。

歩きながら真澄はこのリボンを手にとった時の ことを思い出していた・・・。

6月、夏の訪れを目の前にして真澄の学校は体育祭の 真っ最中であった。

真澄は足の速い方だったのでリレーに出場していた。

その時真澄 はオレンジのリボンで髪を結んでいた。

そんなに髪が長い方ではないのだが、自分の チームの勝敗を分ける大事な一戦だったため、髪が目に入らないように念を入れてい たのだ。

そして、体育祭が終わり真澄がお気に入りのリボンを解いて手の中で遊ばせながら歩いていると、
「きゃあ!」と、前から走ってきた誰かとぶつかり転んでし まった。

「痛、ちゃんと前見てよ!」

そう言ってぶつかった相手を睨みつけると、
「ごめん、急いでたもんだから・・・」そう言って相手は顔を上げた。

「へ?健君?」

そう、真澄とぶつかった相手はなんと健だったのだ。

「怪我はない?」

健が心配そうにきいてくる。

「う、うん。大丈夫だから・・・」

真澄は彼の顔を直視できなかった。

この頃、すでに真澄は健にぞっこんラブだったのだ。

彼の顔を見るのが恥ずかしくて 地面に目を伏せると、

「あ!私のリボンが!!」

真澄お気に入りのリボンはぶつかったショックで近くの川に落ちて流されていたのである。

「そんな〜お気に入りだったのに・・・」真澄は肩を落とした。

「ご、ごめん。俺のせいで・・・」

健が申し訳な さそうに謝った。

「ううん、しかたないよ」

真澄は彼に悪気がないことを知っていたので、彼を責めるつもりはなかった。

健は本当に申し訳なさそうに何かを考えていた が不意に真澄の予想をつかないことを言い出した。

「今日これから予定ある?」

・・・二時間後、真澄は健と二人で商店街を歩いていた。

健がお詫びに新しいリボンを買ってあげるからこれから一緒に買いに行こうと言われたのだ。

真澄はいまだに信じ られず、自分の頬を思いっきりつねってみた。

「痛っ」
どうやら夢ではないようだ。

「どうかした?」

今の真澄の声を聞いて健が振り向く。

「う、ううん、なな何でもないよ。大丈夫」

真澄はあまりの緊張で舌が回っていなかった。

片思いの男に何の前触れもなくデートに誘われたのだ。

真澄でなくても緊張する。

しばらくして目的の店に着いた。

「どれがいい?」

健が訊いてきた。

「え?あ、え〜と健君が選んだ物ならなんでも」

もはや自分でも何を言ってるかわからなかった。

健はしばらく悩んで、水色の リボンを手に取り会計を済ませて真澄のところに持ってきた。

「どの色にしようか迷っ たけどこれが一番かなって思って」

「水色?」

真澄はちょっと意外だった。美亜や杏 奈や両親は真澄は活発的だから暖色系の色が似合うと言っていたし、
 真澄自身をそう だと思っていたから健が寒色系の色を選んだのが真澄には不思議だった。

「ほら、片瀬の名前って確か真澄だろ?青空のように澄んだ名前って意味でこれにしたんだ。ど うかな?」

健は不安そうに聞き返してきた。

「そんなことない。すごい嬉しいよ」

健が 選んだ物だったし、なにより自分の名前をそんな風に例えてくれて、自分のことを ちゃんと考えてくれたこたが真澄にはすごく嬉しかった。


(・・・懐かしいな)
一通 りの回想を終えた真澄は健を探して歩いていた。

もちろん今日会えない可能性も否定できないが真澄は一度決めたら諦めず最後までやりとおすタイプだった。

そんなタイ プだからこそ幸運が降りてきたのかもしれない。

健がいた。

街の商店街公園のベンチ に腰を掛けていた。

しかし世の中うまくはいかないものである。

その隣には沙希が座って話をしていた。

けど今の真澄は固い決意の元行動していたのでそんなことで動揺はしなかった。

(この現状で諦めて帰るなら始めからここに来てないから!)

そう 自分に言いきかせ真澄は二人に近づいた。

二人で話していた沙希が真澄に気づいて立 ち上がった。

「あなた!この間もう来ないでって言ったばかり」

そこまで言って沙希はあることに気が付き、驚いた。

それは真澄の気迫はもちろんのことだが彼女が普通に歩いていたからだ。

(まさか!あの足の怪我なら普通に歩けるようになるまで後3 週間はかかるはずなのに!)

沙希は真澄の回復力に驚くと同時に彼女の健に対する想いの強さを知った。

真澄は天使のように微笑み、健の前まで来ると、自分の髪を結んでいた水色のリボンを解いて両手で抱え、健の前に差し出した。

(これが・・・私の 気持ちの全て)

真澄は声にならない自分の想いをリボンに込めた。

真澄にはリボンの 想いでの他にこの水色から、ひよっとしたらこの前の海のことを健が思い出してくれるかも
しれないと思い、今回このリボンを持ち出したのだ。

健はしばらくそのリボンを不思議そうに見つめていたが、やがて何かを思い出そうと考え始めた。

(健君・・ ・)

真澄は祈った。だが彼女の期待は次の一言によってかき消された。

「もう、健いつまでそんなリボン見つめて るのよ!もう帰りましょ!」

沙希が健と真澄の間に割って入った。

「お、おい沙希」

健は突然の彼女の行動にとまどった。

「いいからもう帰りましょ。何か邪魔も入った みたいだし」

そう言って真澄の方を見た。

睨んだと言った方が正しいか。

「ホラ、行 くわよ」
沙希は健の腕を引っ張る。

「わかったからそんなに引っ張るな。」

去り際に沙希はもう一度真澄の方を向いて誰にも聞こえないようにつぶやいた。

しかし真澄には彼女が言ってたことがなんとなくわかった。

「残念だったわね・・・」

それが彼女が 去り際に言った言葉だった。

夜、病院のベッドで真澄は今日のことを振り返っていた。

(今日は駄目だったけど健君ちゃんと思い出そうとしてくれたんだ。諦めなければ きっと・・・だから・・・)

真澄は窓の外を見つめる。

窓ガラスに気迫に満ちた目を した自分がいた。

一方、沙希も家で今日のことを振り返っていた。

(あの子が健のた めにあそこまでやる子だとは思わなかった・・・正直見直したわ。でも私だって負け ないくらい健のことを思ってるし、私だけを見て欲しい。そのために・・・)

沙希も 窓辺に歩きよって外を見る。

ガラスには真澄に負けない決意に満ちた顔が映った。

(彼女には・・・)(あの子には・・・)(絶対に負けられない!!)  


第4章に続く
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