Dear to me

 

眩しい・・・。
朝の日差しで目が覚めた私は見知らぬ一室のベッドに寝ていた。
頭が痛い・・・。ここどこだろう?
そんなことをぼんやり考えていると部屋のドアが開いて一人の女性が入ってきた。
「真澄!気が付いたのね!」その女性はそう言うと泣きながら抱き付いてきた。

(お母さん・・・)そう言おうとしてハッと気が付く。
(声が出ない・・・どうして?)私は困惑した。
「気が付いたようだね」そこに医者らしい男性が入ってきた。
「ここは病院だよ。君は海に飛び込んだ所を友達に助けてもらってここに運ばれてきた。
君は三日間眠っていたんだよ。」
と、医者が言った。
そして声のトーンを落として続けた。

「ただその時の衝撃で喉と足を傷めてね。しばらくは声も出ないしうまく歩けない。」
(そんな・・・)私はショックを受けた。
17年生きてきた中で一番ショックなことだった。
それから私はその事実を受け入れられずに窓の外を眺めたいた。
どれくらい時間が過ぎただろう。
ノックの音とともに二人の女性が部屋に入ってきた。
「真澄、見舞いにきたよ」ショートの女の子が言った。
「元気そうでよかった・・」続けて入ってきた娘が言う。
(美亜、杏奈・・・来てくれたんだ)
私は親友の二人が来てくれたことがうれしくおもわず泣いてしまった。
「ち、ちょっと真澄、大丈夫?」美亜が駆け寄ってきた。
美亜はツインテールの似合う可愛い女の子。
「どっか痛いのか?」
杏奈も駆け寄ってくる。
杏奈はショートの活発な女の子で二人共私の大親友。
私は近くにあったメモ用紙に大丈夫、来てくれたからうれしくて思わず泣いたと書いて二人に見せた。
二人は微笑んだ。
私は学校で私のことが大騒ぎになっていることをきいた。
「クラスでも真澄のことみんな心配してたよ。担任も落ち着きなくてさ。」
「そうそう、授業の時も真澄は大丈夫かなってしきりにつぶやいてさ。」
私はそんな担任を想像しおもわず吹き出しそうになった。
「しかし真澄も無茶するよ。海に飛び込むなんてさ」
杏奈が呆れたように言った。それを聞いて私はなぜ自分が海に飛び込んだか思い出した。
それは三日前の放課後のことである。
 
 
三日前の放課後の帰り道、真澄達三人は海岸沿いの道を歩いていた。

「今日は海が荒れてるなぁ。」
杏奈が高い波が打ち寄せる海岸を見て言った。

「近いうちに嵐が来るってニュースで言ってたからね。これからもっと荒れてくるわよ」
美亜が補足する。
いつもと変わらない帰り道、あの出来事に遭わなければ何事もなく1日が終わっただろう。
「ねぇ、私ちょっと展望台公園に行きたいんだけどいいかな?」
真澄が二人に言った。
杏奈は首を傾げ「いいけど・・・なんでまた?」と、不思議そうに頷く。
美亜はにやにやしながら言う。

「そこに真澄の大好きな彼がいるんですって」

「ち、ちょっと美亜!なんで知ってるの!?」真澄は驚いた。
無理も無い、このことはまだ二人には話してないし、なにより彼が公園にいることを知ったのは、

つい昨日のことなのだ。
「あら、恋愛の話なんて同姓間じゃ筒抜けよ」
美亜は当然のように言った。
真澄は美亜がかなりの情報通だとは知っていたがまさかこんなことまで知ってるとは思わなかった。
「さ、行きましょ。真澄の憧れの彼を見に・・」

真澄は思った、美亜を敵に回すのはやめようと。しばらく歩いて三人は展望台公園に着いた。
この公園はこの街の有名所であるこの展望台の下に作られた公園である。
この公園には、近くにある川から水を引っ張ってきて作ったプールや、海に向かって落ちる滝と一緒に

海にダイビングする施設などのアトラクションの充実した公園である。
真澄はその公園のベンチに座っている人影を発見した。
(あ、健君だぁ・・・)そこに座って夕日を眺めている。
人物こそ真澄の片思いの相手、健である。
彼は真澄達の通う学校の同級生で、以前美亜と杏奈とコンビニで肉まんを買った時に自分だけ買えず

駄々をこねていた所に彼が偶然通りかかり、自分の肉まんをやるから二人と仲良くしろと肉まんを

渡して去って行った。
これが真澄の恋の始まりである。

はたから見ればなんだそりゃと思うかもしれないが、ろくに人を好きになったことのない真澄にとって

この出会いは彼女を恋に落とすには十分だった。
(よし、とりあえず話かけて話題をとろう)

そう思って彼に近ずく、後ろでは美亜と杏奈が頑張れと応援の目で見つめていた。
「あ、あの!」
真澄が健に話しかけようとした時、
「誰かー!うちの息子が!波にさらわれて!」二人は海を見た。
どうやら親が目を放した隙に海岸へ降りて波に飲まれたようだ。
健は海へ飛び込む。子供をつかんで陸へあがろうとした所に再び大波が押し寄せ、健と子供が飲み込まれた。
真澄は飛び出した。考えるより先に体が動くタイプである。
真澄は運動が得意な方だったので水泳も難なくこなし、波に飲まれてる二人を助けに来た救助隊の所へ

運ぼうと泳いだ。
しかし、そこに三度巨大な波が押し寄せてきた。
救助隊のボートに乗れるのは二人だけ・・・真澄は迷うことなく二人をボートに乗せた。

(後は救助隊に任せよう・・・)

そう思いボートから手を放したとこを波が押し寄せ、真澄は波に飲まれた。

そしてその勢いで岩場に叩きつけられそのまま気を失った・・・。
 
真澄の記憶はそれで終わっていたがこうして病院にいるということは無事救助され生きてるということだ。

ただその代償はかなり大きかったが。

(そういえば健君はどうなったんだろう?)真澄が自分を犠牲にしてまで好きな人なのだ。

気にならないはずがない。
そのこと紙に書いて二人に見せると、二人は少し暗い顔をした。

(まさか!?)真澄の頭に嫌なイメージが浮かぶ。
「いや、大丈夫だ。生きてるよ、ただ…」杏奈が真澄の顔を見て慌てて言った。

(ただ?何だろう?)

真澄が不思議に思っていると、隣で黙ってた美亜が口を開いた。
「そうね…真澄が自分で確認した方がいいわ。そうそう、それより…」
美亜が話題を変えたのでこの話はそこで終わってしまった。夜、真澄は病院のベット中で考えていた。
(美亜の言ってた自分で確認した方がいいってどういう意味だろう?明日さっそく確認してこよう)
そう思い眠りについた。
 
翌日、真澄は看護婦にばれないように病院を抜け出した。
本来ならまだ外出は許可されてないのだが考えるより先に行動する真澄にはそんなきまり関係なかった。
(痛っ、さすがにまだ足が痛むな…)
痛む足を引きずりながら何処に探しに行こうかと考えていたら、前を見知った顔が歩いていた。
(あ、健君だ。ラッキー、今日はついてる!)
そう思って彼に近づこうとした時「健ー!そこにいたのね。駄目じゃない、まだ安静にしてなきゃ!」
黒くて長い美しい髪の女性が健に駆け寄ってきた。
「運動不足は体によくないからな」
そう言って健は女性の方を振り向く。
「そんなこと言って大事になったらどうするのよ。ん…」
その女性は真澄に気付いたらしく、ちらっと真澄の方を見た。
そして何かを考えたように健に振り向き「ホラホラ、わかったからもう帰って安静にしてよね。
もうすぐ雨も降ってきそうだし。」
そう言って空を指さした。

確かに雲行が怪しくなってきた。

「しかたないな…わかったよ。」
健は渋々納得した。
女性はわかればよろしいと頷いて
「私、これから用事があるから先に帰って。寄り道しちゃ駄目よ」
ハイハイと手を降りながら帰って行った。それを見送っていた女性が真澄の方を向くと近寄ってきた。
(へ?何何?何なの?)真澄は混乱した。
そして女性が口を開いた「あなたが片瀬真澄ね?」自分の名前を呼ばれとりあえず真澄は頷いた。
「初めまして、私は彼の幼なじみの藤沢沙希よ。」そう挨拶した。
綺麗な声だな。
それが真澄の彼女に対する第一印象だった。
スタイルもよく顔立ちも美しい、街を歩いていれば五人に一人は振り向くだろう。
「いきなりで悪いんだけともう健に近づかないでくれる?」
(はい?)
真澄は彼女の言葉の意味がわからなく混乱した。
「彼、救助隊がこぐボートに乗って海岸の近くまできたの、でもそこでまた大波がきてボートが
ひっくり返って健は海へ落とされたの。
それを私が救助した、健の中では展望台から落ちてボートに乗せてから最後まで助けたのは私ってことに
なってる。」
(そんな…)
真澄は信じられない顔ををした。
(私のことを…覚えてない…)
続けて沙希言う。
「だから、そこにあなたが助けたのは自分だって言ってきたら、彼きっと混乱する。
私はこれ以上彼が困惑する姿を見たくないの、それに私は彼のことを昔から知ってるし看護だって
毎日してるわ。だから…」
真澄の耳には沙希の言葉は入っていなかった。
ただ、立ち尽くすだけである。そんな彼女に沙希は言い放った。

「だからあなたが彼の中に入れる場所なんてどこにもないのよ」
そう言って沙希は帰って行った。
しばらくして雨が降ってきた。
しかし真澄はただそこに立ち尽くしていた。
 
 
彼の中にはあなたが入れる場所なんてないのよ)沙希の最後の言葉が耳に残る。

(そんな…そんな…それじゃあ私は…私は…)
真澄の頬を水の雫が上から流れてきて地面に落ちた。
これが雨なのか自分の涙なのか今の彼女にはわからなかった。
そうして真澄は糸の切れたマリオネットのようにその場に倒れ、気を失った…。
 
 
第2章に続く

 

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース